他所の青い芝は迷走への甘い罠。
◆迷走するホームページのリニューアル。
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「ネット注文の市場はこんなに伸びている。
うちもネット注文に対応するべきだ!」
片田舎の町外れ、人通り少ない路地裏にある小さな部品卸売会社での話です。
その会社の業務は機械部品の卸売で、その部品はごく一部の専門業者だけが買っていく超ニッチな代物でした。
縮小する業界に合わせて減少する売上を前に、なんとか売上を稼ごうとホームページリニューアルの企画が立ち上がり、私はホームページに詳しい相談役として会議の末席に加わりました。
先方からリニューアルの重大項目として持ち上がったのが、前述の「ネット注文への対応」です。
年々増加するネット取引額の推移を見て、これからは「ネット注文が必須だ」と結論付けます。
しかし、私は反対しました。
ネット注文自体が悪いというのではなく、その会社の現状に「ネット注文」という方法が合致しないからです。
そのニッチな部品販売は国内で一社だけの独壇場。しかも売り先の専門業者の9割以上がパソコンを常用しておらず、未だに情報連絡は電話とFAXがメインでした。
「ネット注文は割に合わない」
正直な私の意見でした。
元々が独壇場ではネット注文だからといって取引先は増えず、パソコンを使わない取引先にはネット注文自体が不要です。
それであれば、部品交換キャンペーンなど消費を増やす行動を起こすか、扱っている部品の範囲を広げた方が現実的です。
しかし、結局は「時代の流れ」という経営幹部の意見が通り専用のネット注文システムを開発することが決定しました。
間違ったリニューアルが運良く当たる事は稀で、専用のネット注文システムを開発するための3桁に及ぶ投資は、いつになっても回収できない損出となりました。
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“リニューアル”という響きが新しい物に目を向けさせるのでしょうか。
リニューアル案件では「現状無視」の失敗が目に付きます。
◆現状をしっかり見つめるのは大切。
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前述の部品販売会社の失敗は「自社の現状を見なかった」のが大きな原因です。
「ネット注文が伸びている」と言っても結局は自社以外のお話、他所の芝でしかありません。
実際にその芝が自社の土壌に会うかどうかは時代の流れとは別問題で、他所で青かった芝も自社の土壌に合わなければ枯れてしまいます。
確かに時代の流れは無視できませんが、それと同様に「自社の現状」も無視できません。
他所がやっている成功事例に心踊らされたときには、「自社の土壌に合うのか?」と冷静に見つめなおしてください。
◆曖昧な目標だけでは無意味。明確にすると戦略が見えてくる。
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冒頭の部品販売会社の事例には、もう一つ失敗の要因が隠れています。
この事例では”売上を上げる”という目標はあったものの、「どうやって売上を上げるのか?」という大切な部分がスッポリ抜け落ちていました。
新規の取引先を増やすのか?
一社あたりの部品の販売個数を増やすのか?
部品の値段を上げるのか?
仮に新規の取引先を開拓するのならば、どういった行動が必要か?
それに合わせて、どんなリニューアルをするべきか?
自社の現状を踏まえ目標に到達するための道筋を一つ一つ確認する。
かっこつけて言うのならば、
「ホームページリニューアルにおける戦略の立案」です。
もう一つの失敗要因とはこの戦略を立てなかったことです。
とこか他所で仕入れたネタありきの会議では、いくら議論しても勝てる戦略は出てきません。
◆戦略を立てることで飛躍的に成功に近づける。
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冒頭での失敗を傍で体験した私は、
それから「お客さんの戦略」にも首を突っ込むようになりました。
「○○をやりたいんだけど、浅海さんどう思います?」
と相談を持ち掛けられれば、現状と目標を確認し、あるべき道筋から大きくずれていれば指摘します。
例えば、
「検索の順位を上げたい」という相談に対して
『ホームページの内容を見直して、無料相談への誘導を図りましょう』
とアドバイスすることがあります。
例のお客さんの目標は売上の増加で、検索の順位を上げれば儲かるとどこかで聞いたと言います
しかし、詳しく確認すると、
売上につながりやすい「地域名+サービス名」で既に検索上位にあり、
アクセス数の割りに注文が少なすぎるという現状が見えました。
点数で表すのならば、
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検索順位対策 :90点
ホームページ内容:10点
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というような状態でした。
この場合、検索順位を更に上げる対策よりも、ホームページ内容の改善が優先すべき対策です。すでに80点の社会を90点にするよりもまだ10点の理科を50点にする方がカンタンでしかも合計点が高くなるのと同じ理屈です。
もし、この方が相談しないまま、現状をきちんと把握せず、目標への戦略を考えなかったのならば、苦労する割りに成果が上がらない検索エンジン上位対策に多くの時間を費やすことになっていたでしょう。
現状を把握し、目標へ辿り着くための戦略を考えれば、飛躍的に成功へ近づけます。
◆まとめ
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成功体験談や統計データの過信は禁物。
他所の青い芝が自社でも通用するとは限らない。
自社の現状と目標から見えるのが戦略。
よく判らないのならば第三者に相談するのが吉。